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山口裕史氏は2000年〜2004年の間、尚美学園大学芸術情報学部・音楽メディアコースで冨田先生から指導を受けた新進気鋭のサウンドクリエーターである。
当時のレッスンは「トミタメソッド」という名称では呼ばれていなかったが、作編曲から音源モジュールを駆使した演奏、録音、
立体音場構成までを学んでいる。いわゆる研究生のOBである。
今回インタビューに快く応じてくれたので、現在の活動を話してもらった。
■トミタメソッド(冨田先生)からはどのような事を学びましたか?
大学1、2年次には、一般的な音源モジュールを使用した楽曲制作を指導して頂きました。レッスン生は皆、YAMAHA MU1000 というとても一般的な
モジュールのみを使用していたのですが、限られた環境の中でプロレベルの音楽的表現をすることを目標に、とても細やかなデータ制作を指導して頂きました。
この経験で細やかなデータ制作がクセとして身についたおかげで、後の楽曲制作の幅が格段に広がりました。3、4年次では、音源モジュール一台のみという枷を無くし、
サラウンドを作曲の段階から意識した楽曲制作を指導して頂きました。楽曲制作からサラウンドミックスまで全てを作曲者一人で完結させる事で、コンセプトの一貫した作品作りを
行うことが出来、大変多くの知識を得ることが出来ました。古くから立体音響を楽曲制作に積極的に取り入れてこられた冨田先生のアドバイスを頂きながらの
レッスンは、唯一無二のとても貴重な体験でした。
そして特筆すべきは、この大学4年間での冨田先生の指導は、「プロの育成」という事に徹底的にこだわっていらっしゃったという事です。
私たちレッスン生が制作した作品は、冨田先生が良しと判断してくださった場合、メディアに試聴してもらう機会を与えて頂きました。雑誌やシンポジウム等で作品を発表させて頂く事で、
プロの現場というものを肌で感じることが出来、自分自身の気持ちも「プロ」寄りにシフトアップさせる事が出来ました。
InterBEE2002国際放送機器展にて SteinbergJapanのデモ風景(左:山口氏)
■当初からのご自身の夢を叶えましたが、今どのように感じていますか?
良い作品を作るぞ!という使命感と、それを成し遂げる事が出来るのかどうか?という緊張感、を日々感じています。物凄く攻めの気持ちになる日もあれば、
大丈夫かオレ!?と不安になる日もあります。しかし、とにもかくにもゲーム音楽の制作に携わることは私の大きな目標でしたので、今それが出来ていることは私にとって何より幸せです。
ここ最近、高性能な次世代機が次々と発売になりました。グラフィックはよりリアルになり、もはや現実を超えてしまいそうな勢い?です。そして、それにともなってゲーム中の音楽の在り方も
変化しつつあるようです。これからはそういった新しい流れの中で、音楽性や演出に自分らしさを出し、色々な試みに挑んでいきたいです。片やそんな事を言いつつも、私は
古き良きゲーム(さらに言うとRPG!)も大好きでして、今の技術で古き良き作風のゲームをいつか作ってみたいとも思っています。漠然と、ですけど。
他にもやってみたい事は沢山あって、妄想を始めると止まりません(笑。
それらの妄想を実現していくためにも、音楽の面でもシステム作りの面でもまだまだ勉強しなければいけない事が山積みなのです。そうです、システム作りをサウンドプログラマーの人間と
話し合って進めていくのも、コンポーザーの大事な仕事なんです。これについてはまだまだ知らないことが沢山あるので、これからの大きな課題の一つです。課題を一つ一つクリアして、
制作者とプレイヤーの方々でその世界を共有出来るような、そんな素晴らしい作品を目指し、これからも頑張りたいと思います。
■初めて制作に携わった作品「大神」についてお聞かせ下さい。
「大神」はのどかな大自然を舞台とし、人間や動物との触れ合いを楽しむ“癒し”がテーマの“大自然冒険活劇”です。墨絵タッチの和風テイストなグラフィックが特徴的です。
そんな大神の音楽は、「吹奏楽」+「和楽器」という組み合わせをメインに、印象的で温かみのあるサウンドを目指しました。ディレクターがとても音楽にこだわりを持っている方で、
何度も意見交換を行い、一曲一曲シーンに合うよう、コード進行、メロディ、アレンジ等の細部にまでこだわって仕上げました。
簡単に出来た曲は一曲もありませんでした。全曲に思い出があります。その中でも意外と印象に残っているのはジングルです。ジングルはほんの数秒の間で、的確に、そして分かり易く、
何が起きたのかを伝えなければなりません。この短く簡潔にまとめる作業が予想以上に困難でした。実際ゲームで使われたジングルは4曲程だったと思いますが、
試行錯誤している段階では20〜30曲作っていたと思います。
また、一番印象に残っているのは、やはりラストのシーンですね。最後の戦いの最中、力尽きようとしている主人公アマテラスを、遠くの地から見守る仲間たちの祈りが光の玉となり、
見事復活させるというシーンです。ベタなんですけど、ゲームを最初からやっていくと泣けるんです。私は曲を作りながら既に泣いてまして、当時その曲の締め切りが間近だったにもかかわらず、
感極まってなかなか手が動きませんでした(笑。しかし、完成してゲームにのっかった時は、ここまで頑張ってきてよかった!と心から思えました。プレイして下さった方からも、
「涙ながらに最終戦に挑んだ」というような嬉しい報告が多数あり、制作者の一人として大変嬉しいです。これがあるから、この仕事は過酷でも辞められません。
他にも思い出すと色々と書きたいエピソードがあるのですが、全て書くと大変な事になってしまうので、この辺でやめておこうと思います。
サウンドトラックの曲紹介ページでも、制作秘話等を書いておりますので、よろしければ読んでみて下さい。
笑いあり涙あり、心がほっこりするような、、、初めての作品がとても自分好みのゲームだったので、思い入れも一入です。
この冬にベスト版も発売されるようなので、もしよろしければ年末年始にでも是非プレイしてみて下さい。ほっこりしますよ。
「大神」公式ホームページ http://www.o-kami.jp/
■サウンド制作にはどのような機材をお使いなのでしょうか?
現在はWindowsマシン一台で作業しています。シーケンサーはCubase SX3を使用しています。音源には、Native Instruments KOMPLETE3、SpectraSonics Stylus、Atmosphere 等を
使用しています。ハードウェアの音源やエフェクターは今のところ使用していません。作業効率を上げるために、制作環境は出来るだけシンプルにするようにしていますね。
こだわりはモニター用のヘッドフォンです。あえて民生用のオープンタイプのものを使っています。ゼンハイザーのHD595です。フラットで素直な音ではなく実際にリスナーが聞く音をモニターする為にチョイスしました。
■最後に、ゲームのサウンドクリエーターを志す方にアドバイスをお願いします。
ゲームを通じてこんなことを表現したい!という思い、そして行動力です!

山口 裕史(やまぐち ひろし)
作編曲・シンセサイザープログラミング・サラウンド制作を冨田勲氏に師事。
2004年クローバースタジオ株式会社へ入社。PlayStation2用ソフト「大神」のコンポーザーを務める。
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